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むずむず脚症候群の治療について

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むずむず脚症候群の治療について
Medical Treatment

中等症から重症なむずむず脚症候群の場合、基礎疾患の治療とライフスタイルの改善だけではなかなか満足のゆく効果は得られません。したがって、薬物による治療が必要となってきます。

これまでに4つのことなったタイプの薬物が試みられてきました。

それぞれの薬物に特有の効果と限界、副作用があり、薬の選択にあたっては患者さんの症状の出現パターンと重症度を考慮することが重要です。

4つのタイプの薬
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ドパミン系薬剤

現在むずむず脚症候群に対する薬物の治療の第一選択薬といえるものがドパミン系薬剤です。

ドパミンとは脳に存在する神経伝達物質の1つで、いわゆる脳のホルモンであり、脳の正常な動きに必要な物質です。ドパミン系薬剤はこのドパミンの作用を増強する効果があります。むずむず脚症候群の全ての症状、すなわち脚の異常感覚、脚の不髄意運動、睡眠障害、睡眠中の脚痙攣を改善し、服薬開始より2週間から4週間で40%から70%以上の患者さんから明らかな症状の改善を示すとされています。

副作用

ドパミン系薬剤の副作用にには第一に嘔気、嘔吐、腹部不快などの消化器症状が挙げられます。特に服用初期に嘔気が多くみられますが、これに対しては制吐剤を併用することにより治療の継続が可能です。また1日1回就寝前の服用により夜間の睡眠が改善される一方で、レストレスレッグス症候群の症状がより早い時刻から現れるようになることがあり、この場合は薬剤の中止、変更が必要になります。その他の副作用として鼻汁、幻覚、便秘、低血圧、頭痛が報告されています。

ベンゾジアゼビン系薬剤

いわゆる精神安定剤、睡眠薬、抗不安薬と呼ばれるものがこれにあたります。脳の機能を全体的に低下させることにより、多少の脚の異常感覚や不髄意運動が残っていても、患者さんを睡眠へと導くものです。したがって、症状が夜間に集中している患者さんに最も効果があります。

副作用

副作用は昼間の眠気、けだるさで車の運転には特に注意する必要があります。ベンゾジアゼビン系薬剤を服用した時に飲酒をすると幻覚、錯乱、をきたすことがあります。またこれらの薬は時に習慣性があります。

オピアト化合物

麻酔用の鎮痛剤で最重症のむずむず脚症候群の用いられます。

副作用

副作用にはめまい、眠気、嘔気、嘔吐、便秘、幻覚、頭痛があり、クルマの運転には注意を要します。服用時の飲酒はやめること、また時に習慣性があります。

抗てんかん薬

抗てんかん薬は「脚の異常感覚」と「動かしたくなる気持ち」を軽減させます。特に痛みがあり、症状が昼間に強い患者さんに有効なようです。

副作用

副作用はめまい、眠気、倦怠感、食欲増進、ふらつき感です。クルマの運転には注意を要します。抗てんかん薬ガパペンチンのプロドラックになるレグナイト錠が2012年1月にむずむず脚症候群治療薬として使用できるようになりました。

まずは自分でできる事。
Medical Treatment

薬を用いた治療だけでなく、まず今日から自分でできることがあります。
薬からのアプローチと自分でできる事のアプローチの両方から治療をすることを当院でも指導をしています。

2021年版米国むずむず脚症候群治療ガイドラインMedical Treatment

2000年代にそれまで見過ごされていたむずむず脚症候群(restless legs syndrome: RLS)が実は広く存在する疾患であることが明らかになるにつれて、一部の専門家だけでなく、地域の一般医もRLSの診断と治療にかかわることが必要になってきました。そこで2004年に欧米の専門家が協力して、一般医が標準的な診療を提供できるように、RLSの治療ガイドラインが作成されて公表されました。その後2013年に改訂版が作られました。しかしこの8年間で、さらに多くの新しい情報が蓄積されて、再度治療ガイドラインを改定する必要がでてきました。そして欧米の専門家により新ガイドラインが作成されて2021年に公表されました。

2021年版米国RLS治療ガイドラインのポイントは3つあります。

1.全てのRLS患者において鉄の状態を評価して、経口剤または注射製剤により適切な鉄補充療法を考慮すべきである。

2.慢性持続型RLSに対してはアルファ2デルタ刺激薬を第一選択薬として、ドパミンアゴニストは第二選択薬とする。

3.難治性RLSに対して低用量オピオイド製剤は適切である。

ここでは以上のポイントを中心に、新治療ガイドラインを紹介してまいります。

鉄補充療法

これまでの研究で、RLS患者では脳の一部の領域で鉄の量が減少しており、貧血や全身性の鉄欠乏はなくても、鉄補充療法をすることでむずむず脚の症状が改善することがわかってきました。現在までに、脳の鉄欠乏を直接診断する方法は見つかっていません。そこで医師は血清鉄、血清フェリチン、総鉄結合能、トランスフェリン飽和度を測定して総合的に脳の鉄の量を推定することになります。

そして専門家たちの経験から、RLS患者では血清フェリチン値が75μg/L以下か、トランスフェリン飽和度が45%以下の場合には、経口鉄剤による鉄補充療法を受けるべきと考えられています。標準的な鉄補充療法は、65㎎以上の経口鉄剤と鉄の吸収を促してくれるビタミンC100-200㎎を同時に1日1回、または2日に1回服用します。鉄は朝よりも夜の方が血中から脳内へ移行しやすいので、夜に鉄剤を服用する方が効率がよいでしょう。また、鉄剤の体内への吸収をよくするためには空腹時に服用するのが理想的ですが、胃の不快感が出る場合は食後の服用でも構いません。治療中は血清フェリチン値を最初は3-4か月後に、その後は3-6か月毎に検査して追跡します。そしてフェリチン値が100μg/L以上になったら治療を中止することができます。しかしRLSが悪化した場合には、フェリチン値が300μg/L以上になっていなければ、鉄補充療法を再開するべきでしょう。

鉄剤には経口剤のほかに注射用製剤があります。
中等度から高度の慢性持続型RLSか、あるいは難治性RLSの患者さんで、かつ、血清フェリチン値が76-100μg/Lにあるか、経口鉄剤による鉄補充療法よりも早い効果を望む場合には、注射用鉄剤の静脈注射が選択肢となります。
海外では注射用鉄剤1000mgを1回で静脈注射するか、1回500mgを5-7日開けて2回静脈注射する方法が効果的とされています。
ただし日本では、鉄剤の静脈注射の用量は週1回500mgまでしか認められておりませんので、1回1000mgを使用することはできません。

間歇型RLS

治療が必要となるくらい苦痛なむずむず脚が出るが、その頻度が週に2回未満の場合には、間歇型RLSと診断します。

間歇型RLSでは夕方や寝るとき、夜中に目が覚めたとき、あるいは飛行機の中、長距離のドライブ、劇場や映画館などの特別な状況でむずむず脚が出てきたときに、レボドパ製剤(メネシット, マドパーなど)50-100㎎を頓用します。
ただし、レボドパ製剤はパーキンソン症候群の治療薬なので、RLS患者さんにパーキンソン症状があるときだけレボドパ製剤を使用することができます。

ところでレボドパ製剤による治療にはオーグメンテーションとリバウンドの問題があります。オーグメンテーションとはむずむず脚の症状が悪化する現象で、毎日レボドパ製剤を服用している患者の70%に発現して、1日の用量がレボドパ200㎎以上の時により頻繁に起こります。その結果、レボドパ製剤によるRLS治療は週に3回以下の頓用だけに制限することが推奨されています。またリバウンドとは夜にレボドパ製剤で症状が治まっても早朝に再び症状が現れる現象のことで、20-35%の患者にみられます。

低用量オピオイド製剤を寝る前に頓用する方法も効果的です。トラマドール(トラマール)を50-100mg寝る前や夜中の症状が出た時に服用します。副作用で便秘や嘔気がみられることもあります。

患者さんにRLS以外の不眠の原因がある場合には、ベンゾジアゼピン系製剤の頓用がよいかもしれません。短時間作用型のゾルピム(マイスリー)5-10mgや中間型のエスゾピクロン(ルネスタ)1-3mgが有用でしょう。ただし高齢者では夜間の転倒や認知障害のみられることがあります。ベンゾジアゼピン系製剤はRLSのむずむず感やピクツキなどの感覚運動症状を改善するよりも不眠症と不安症を治療することで効果を発揮すると考えられます。

慢性持続型RLS

RLSが少なくとも週に2回以上、頻繁に現れて毎日治療が必要なほど苦痛をもたらしており、睡眠や生活に深刻な支障をきたしている場合、慢性持続型RLSと診断します。

ドパミンアゴニストは効果的な治療薬でこれまでRLSの第一選択薬として使われてきました。しかしながら、ドパミンアゴニスト治療によりオーグメンテーションとよばれる症状の悪化する現象が高頻度にみられることと衝動制御障害と呼ばれる行動異常のリスクが高まることが知られるようになってきました。そこでドパミンアゴニストに代わって、今回のガイドラインではアルファ2デルタ刺激薬が第一選択薬として推奨されるようになりました。
アルファ2デルタ刺激薬にはガバペンチン(ガバペン)、プレガバリン(リリカ)、ガバペンチンエナカルビル(レグナイト)があります。
ガバペンチンかプレガバリンを通常1日1回ないし2回、夕方か夜か寝る前に、普段症状が現れる1-2時間前に服用します。ガバペンチンは300mg(高齢者では100mg)から開始して多くは1200-1800㎎で維持治療をします。プレガバリンは75mg(高齢者では50mg)から開始して通常150-450㎎で維持治療をします。
ガバペンチンは抗てんかん薬なのでRLS患者さんがてんかんを合併しているときに、またプレガバリンは神経障害性疼痛の治療薬なのでRLS患者さんが神経障害性疼痛を合併しているときに、それぞれ使用することができます。

ガバペンチンエナカルビルは抗てんかん薬ガバペンチンのプロドラッグで、体内に吸収されてからガバペンチンに変換されます。ガバペンチンエナカルビルは1日1回600mg(同300mg)を午後5時に服用すると就寝時刻に効果が現れます。ガバペンチンエナカルビルはRLS治療薬として承認されている唯一のアルファ2デルタ刺激薬です。

アルファ2デルタ刺激薬の副作用は日中の眠気、めまい、ふらつき、認知障害です。また、アルファ2デルタ刺激薬による治療は、RLS患者さんに慢性の疼痛、不眠症、不安症の合併症がある場合には、それらの症状にも効果を発揮する一石二鳥、あるいは一石三鳥、四鳥の治療になる利点があります。

ドパミンアゴニストを使用する場合は、高用量になるとオーグメンテーションの発現が高まるので低用量で維持するべきです。プラミペキソール(ビシフロール)は通常0.125mgを症状の出る2時間前に1日1回服用します。効果が得られるまで2-3日ごとに0.125mgずつ増量しますが、0.5mgを超えないようにしましょう。
ロチゴチンパッチ(ニュープロ)は1日1回2.25mgを貼付して、必要なら4.5-6.75mgに増量します。ドパミンアゴニストの副作用には嘔気、軽い頭痛がありますが10日程度で消失します。高用量では日中の眠気や睡眠発作が報告されています。

ドパミンアゴニストによる治療には今回のガイドラインで第一選択薬から外されることになった2つの深刻な問題があります。
第一に、最も問題となるのがオーグメンテーションです。オーグメンテーションは日中の早い時間にRLS症状が現れるようになったり、症状が下肢を超えて腕まで広がったり、用量を増やすほど症状が悪化したり、さらに薬の効果時間が短くなったりする現象です。プラミペキソールでは毎年8%の患者さんにオーグメンテーションが発現して、10年間の治療で40-70%の患者さんにオーグメンテーションが認められます。ロチゴチンパッチではやや少なく5年間で36%となっています。オーグメンテーションはドパミンアゴニストの用量が増えるほどリスクも高まるので治療中は推奨用量を超えないことが重要です。

第二の問題は長期使用時の6-17%にみられる衝動制御障害です。衝動制御障害とは、ギャンブル依存、買い物依存、過剰性的嗜好などの行動異常で、治療開始から平均9か月で現れてきます。
ドパミンアゴニスト治療中には、これら2つの問題を受診毎にチェックする必要があります。

難治性RLS

治療薬の効果が減弱したり、オーグメンテーションが発現したり、あるいは副作用により、十分な用量の第一選択薬治療に反応しない患者さんを難治性RLSと診断します。ただし、
適切な用量のドパミンアゴニストを複数回試行しても全く効果が見られない症例については、本当にRLSであるのか、診断に疑問を持つべきでしょう。

難治性RLSにはオピオイド製剤がかなり効果的です。オピオイド製剤治療により、患者さんの日中の疲労感が軽減して、睡眠と生活の質が改善するようになるので、オピオイドは依存症の恐れがあるからと、治療をためらうべきではありません。薬物依存の既往歴が無いRLS患者さんに対して、オピオイド製剤を適切に使用する限り、用量が増えていったり、乱用されるようなことはまずありません。副作用では嘔気、便秘、尿貯留が初期に見られますが、次第に軽減していきます。また、オピオイド製剤は睡眠時無呼吸症候群を悪化させることがあるので気を付けてください。

低用量オピオイドのトラマドール(トラマール)を50mgから開始して、1日100-200mgで維持治療をします。
ただしトラマドールは慢性疼痛の治療薬なので、RLSの症状が慢性疼痛とみなせる場合に使用できます。

以上が2021年版米国むずむず脚症候群治療ガイドラインの大まかな内容です。今後は日本でも、この新しいガイドラインに沿って診療が進められることでしょう。

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